RPAは本当に業務効率化の救世主となるのか

働き方改革で必要となる業務効率化の急先鋒として注目されるRPAツール。
しかし、「なんとなくすごそう」「なんでも自動化できちゃうんでしょ?」と評判だけが独り歩きしている状態なのも事実。先がけてRPAツールを導入した企業からは意外にも「こんなはずではなかった」という声も聞こえてきます。RPAとはいったい何なのか。生産性の向上に対して、どんな効果があるソリューションなのか。RPA導入を成功させ業務効率化を実現するポイントとは何かを解説します。

注目されるRPAとは

RPAとは「Robotic Process Automation」(ロボティック・プロセス・オートメーション)の頭文字をとったもので、そのまま日本語に直訳すると「ロボットによる業務の自動化」というような意味になります。
一般的にRPAといった場合にはそのなかでも特にバックオフィス業務を自動化するソフトウェアをさす場合が多いようです。

ロボットによる業務の自動化というと、大きな工場などでロボットアームが動いていたり、映画などに出てくるロボット店員などを思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし、RPAのロボットとはそれとは違い、コンピューターのソフトウェア、またはこのコンピュータソフトウェアを用いたツールの事をさします。
このソフトウェアロボットは仮想知的労働者(digital labor)とも呼ばれていますが、それを知るとRPAとは何かがかなりイメージしやすくなります。

つまりRPAとは、ロボット(ソフトウェア)がまるで社員のように単純な繰り返し作業を自動で行ってくれる(自動で処理してくれる)ツールなのです。このロボット社員は、まるで人間の社員が行うように様々なアプリケーションをまたいだ業務を処理することが可能です。

エクセルでこっちのファイルを開いてコピーしたデータをこっちのシステムに貼り付けて・・・なんてこともできます。しかも人間の社員とは違い、休憩も有給休暇も必要ありませんし、生産性が下がることもありません。(もちろん、お茶を汲んでもらったりジョークを呟いたり(!)はしてくれませんが)

また、RPAはよくAI(人工知能)と比較されますが、実際にはRPAとAIはまったく別の技術です。「RPAの中にはAIが使われているものもある」というのが正解です。

RPAで何ができるのか

RPAは、先述したようにロボット社員を一人雇うようなイメージでアプリケーションをまたいだ業務を自動化をすることができます。

もちろん、なんでもできるわけではなく人間にしかできないことの方が多いでしょう。

しかし、RPAが実現できる範囲内であればロボット社員は業務を24時間休むことなく正確に自動的にこなしてくれます。

RPAに一番向いている業務は繰り返す業務(定型作業)です。

例えば、顧客マスタから送り状へ住所氏名をコピーしたり。
注文書の内容をコピーして業務システムに入力するような転記作業であったり。

同じような業務を延々と繰り返すいわゆる単純作業において、RPAは真価を発揮します。実務で言うと、データ入力などの入力作業がイメージしやすいでしょう。

RPAの技術革新はどんどん進んでおり今後は決まった作業の繰り返し以外にも使えるようになると言われていますが、今はまだまだ繰り返し業務の自動化がメインです。しかし、RPAを導入することでルーティンワークから解放されるメリットは大きいでしょう。

さらに、RPAと他の技術を組み合わせることで思っているよりもかなり幅広い業務を自動化することも可能です。RPAだけでは難しいシステム間の連携も、API技術と組み合わせることで可能になります。

また、RPAのもう一つの大きな特徴は自動化するシステム(ソフトウェア)でありながら多くの場合に「プログラミングが不要」という点です。なにか導入したシステムをカスタマイズしたい場合、情報システム部やエンジニアに依頼をして・・・というのが一般的です。しかしRPAの場合は、自動化した業務のフローが少し変わってカスタマイズしたい・・・というような場合にプログラミングの知識が必要ありません。現場の担当者が、フローが変わるたびに柔軟にカスタマイズすることも可能なのです。

RPAで業務を効率化した具体例

では実際の業務ではどのように自動化を行い、業務を効率化することができるのでしょうか。

  • 注文書を社内システムへ入力

    もっともイメージのつきやすい作業です。顧客から毎日送られてくる大量の注文書。決まったフォーマットで送られてくるものの、手作業で自社の注文システムへ入力しなければなりません。
    注文書に添付されているエクセルの注文書を開き、各行をコピーして社内システムへ入力。
    この一連の作業をRPAで自動化することが可能です。人間が行う場合はヒューマンエラーが発生してしまいがちですが、RPAであればヌケモレが出ることはありません。
    さらに、OCRなどのシステムと連携すれば紙の注文書に対応できる場合もあります。

  • 報告用のレポートの作成作業

    毎週同じ項目のレポートを作るために、システムとパワーポイントを並べて開きせっせとコピーする・・・そんな作業をしているビジネスマンは多くいます。
    パワーポイントだけ、エクセルだけを使う業務は自動化がしやすいですが、いろいろなアプリケーションを使う場合は従来の自動化ではやりにくくあきらめられていたからです。
    RPAならこういった作業も自動化し、業務の効率化が可能です。

  • 社外システムと社内システムの連携

    受発注などに自社のシステムを使っている場合、社外のシステムと社内のシステムの連携が技術的に難しく、社外システムのSFAから社内システムの受発注システムに手作業で登録作業を行っている会社が数多く存在します。
    こういったケースでもRPAであればシステム間の壁をこえて業務の自動化ができる場合が多くあります。

  • WEBサイトからの情報収集

    いろいろなWEBサイトから決まった情報を集めたい場面は数多く存在します。
    例えば、企業情報ページをめぐって営業リストを作ったり、競合商品の価格を調査したり、自社の口コミを収集したり。
    こういった作業はRPAで無くても自動化が可能ですが、専用システムの導入はハードルが高く結局のところマンパワーを使っている場合が多いのではないでしょうか。
    RPAで自動化することで、こういった作業にあてていた時間をより知的な作業にあてることができるようになります。

RPAのメリットと問題点

RPAでできることは「作業の自動化」につきますが、導入することの最大のメリットは業務の効率化ではありません。

それはRPAが「辞めない」「さぼらない」「忘れない」ロボット社員であるということです。

  • 辞めない
    ルーティンワークに派遣社員やBPOのリソースを充てていた場合、担当者が辞めてしまうと一から教育しなおすコストが発生します。その点RPAは当然ながら退職することはないので、安心して利用し続けることができます。

  • さぼらない

    さぼらないという言い方は悪いかもしれませんが、人間が作業を行う場合その効率はどうしてもモチベーションに左右されがちです。また、モチベーションを維持するためにボーナスなどのコストをかける必要はありません。当然休憩や休暇も必要ありません。昔「24時間働けますか」というのは栄養ドリンクのフレーズでしたが、現代ではRPAがいとも簡単に実現しています。

  • 忘れない

    事務作業をはじめとして人間が行うルーティンワークについて回るのがヌケモレミスなどヒューマンエラーの存在です。RPAではヒューマンエラーの心配がないので今まで目視でダブルチェックを行っていた場合チェックをはぶくことも可能です。自動化した業務以上の業務効率化が目指せます。

RPAに任せられる業務は今まで人が行っていたルーティンワークですので、人件費削減によるコストカットが期待できます。働き方改革関連法対策で残業時間の削減などが必要な場合には切り札となるかもしれません。

とはいえ、RPAも万能ではありません。

出来ないことも多く、導入したけれども期待ほど自動化できなかったという声もあります。その原因の多くはRPAで自動化する「準備」ができていなかったことにあります。

RPAソリューションに限った注意点ではありませんが、RPAなどのソリューションはあくまでもシステムなので、紙などアナログのものは苦手です。OCRとの連携ができるといっても、手書きの場合は精度に限界があります。

また、注文書や報告書を社内システムに入力する業務を自動化する場合、そもそも注文書や報告書のフォーマットが決まっておらずバラバラだとRPAでの効率化はだいぶ難しいものになるでしょう。

まとめ

RPAは業務を自動化することにより効率化し、働き手が減っていく中大きな期待を寄せられているツールです。RPAツールのサービス提供会社も増え、導入事例も増えてきています。RPAツールの導入を検討する会社は増えていくことでしょう。
しかし、アナログ業務には弱いなどデメリットもありますので導入には工夫も必要になってきます。